たまりば

多摩のコミュニティビジネス 多摩のコミュニティビジネス稲城市 稲城市

2019年03月20日

映画と音と音楽と――手回し映画の興隆と終焉

先日、府中市の多摩交流センターで、全国生涯学習ネットワーク他主催による「第181回、多摩発・遠隔生涯学習講座」でお話させていただいた映画技術史の内容を要約しましたのでご笑覧ください。

映画と音と音楽と――手回し映画の興隆と終焉

タイトル
映画と音と音楽と―手回し映画の興隆と終焉       講話・映画史研究/島倉 繁夫     

1895年.映画は誕生した時には音声を持たず、のちのトーキー(発声)映画との区別でサイレント(無声)映画と呼ばれています。サイレントとトーキーを分けたものは、手動と電動でした。映画はトーキーになるまで、撮影も上映も手回しで行われていたことは周知のとおりです。
誕生したばかりの映画は短くて、ボードヴィルやバーレスクなどの幕間をつなぐために利用されました。音楽で成り立つこれらのステージには必ずピアノやオルガンがあり、映画にもごく自然に即興の演奏がつけられたことは想像に難くありません。その意味で、最初の映画(フィルム)自体は音声を持ちませんでしたが、音楽演奏はついていた、と考えられています。

映画と音と音楽と――手回し映画の興隆と終焉


1910年代。映画が変化に富むストーリーを持つようになり、1作品の上映時間が長くなるのと並行して人気が高まり、5セント硬貨1枚で楽しめるニッケル・オデオン(映画小屋)が登場。喜劇、悲劇、アクションなど映画の情景に応じた楽譜のライブラリが用意され、フィルムは楽譜といっしょに配給されるようになります。
ニッケル・オデオンは次第に映画館の様相を呈し、ステージの前には演奏家のためのボックスがしつらえられ、小編成の楽団によるライブ演奏が定着します。また、いろいろな楽器の音を一人で演奏できるワーリッツァオルガンの導入も見られました。

映画と音と音楽と――手回し映画の興隆と終焉

映画と音と音楽と――手回し映画の興隆と終焉

映画と音と音楽と――手回し映画の興隆と終焉


ハリウッドに発したスターシステムにより映画ファンが一挙に増加すると、1910年代半には1000席を有する映画館が誕生。そうした動向を後ろ盾に、まず歴史遺跡を生かせる地の利を得て、史劇大作を投入して市場を拡大したのはイタリア映画でした。「トロイの陥落」1910、「クオ・ヴァディス」1912、「カビリア」1914、といった超弩級の映画が次々と製作されると、すぐにアメリカのD・Wグリフィス監督が「国民の創生」1915、「イントレランス」1916、という3時間レベルの超大作を発表します。

これらの長時間にわたる映画の音楽は既成の楽曲の流用では間に合わず、オリジナルで作曲する必要が生じたことは必然の成り行きでした。また大作映画では、オーケストラと混声合唱団によるライブ演奏といった形態へと拡大していきます。こうした傾向は他の国々でもほぼ同様の発展を見せるようになります。ここに映画音楽という独自のジャンルが確立されます。

映画と音と音楽と――手回し映画の興隆と終焉

初めての映画音楽は1908年に制作された「ギーズ公の暗殺」のために作曲されたサンサーンスによる同名の曲とされていますが、1920代には現役のオネゲル、プロコフィエフ、ショスタコーヴィッチ、ラフマニノフ、フッペルツといった作曲家たちが映画音楽に参画し始めます。

ところで、映画をトーキーにするためには、まず音声を光学的に記録してフィルムに焼きこむ仕組みの発明。更に、手回しではなく、撮影機と映写機を平均的に駆動するための電動小型モーターの開発が不可欠であり、その上上質の音で再生させるために、フィルムの走行を1秒16駒から24駒へとスピードアップさせるという大転換が必須の条件でした。

映画と音と音楽と――手回し映画の興隆と終焉

こうして1927年、「ジャズ・シンガー」という初のトーキー映画が公開されることになります。映画誕生から32年後のことです。ところがそれは主人公の歌の部分だけをレコードと同調させたパートトーキーでした。

オールトーキーは1928年制作のアメリカ映画「紐育の灯」。ここに至るまで、撮影/上映はすべて手回しだったということは驚嘆に値します。
なお、トーキー時代初期の映画では、ガーシュイン、サティなども活躍しています。




同じカテゴリー(映像 (写真、ビデオ、映画))の記事画像
★稲城市「三沢川 桜・梨の花まつり」第2日の様子★
「TOKYO GIANTS TOWN(東京ジャイアンツタウン)」への登り口
★東京ビッグサイトで「コンテンツ東京2023」開催★
★聴く映画の好機! 活動弁士・沢登翠さんの名調子をこそ、聴け★
★一日遅れの
★小金井市で「三沢川と生物多様性」の講演をさせていただきました★
同じカテゴリー(映像 (写真、ビデオ、映画))の記事
 ★稲城市「三沢川 桜・梨の花まつり」第2日の様子★ (2024-03-31 14:21)
 「TOKYO GIANTS TOWN(東京ジャイアンツタウン)」への登り口 (2024-03-14 10:41)
 ★東京ビッグサイトで「コンテンツ東京2023」開催★ (2023-12-08 16:00)
 ★聴く映画の好機! 活動弁士・沢登翠さんの名調子をこそ、聴け★ (2023-11-06 18:54)
 ★一日遅れの"中秋の満月 "★ (2023-09-30 22:40)
 ★小金井市で「三沢川と生物多様性」の講演をさせていただきました★ (2023-07-17 16:37)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
映画と音と音楽と――手回し映画の興隆と終焉
    コメント(0)